ローカルフラッグと考える与謝野町のまちづくり ~誇れる地域をみんなでつくろう~
講師:株式会社ローカルフラッグ 代表取締役 濱田 祐太(はまだ ゆうた)氏
日時:(連続講座)
第1回 2022年9月22日 19:00〜21:00
第2回 2022年10月19日 19:00〜21:00
第3回 2022年11月23日 13:30〜16:00
会場:与謝野町産業創出交流センター
<第1回目講座>
【1】自己紹介
濱田講師と、9月22日に会場に集まった運営者含む9名の参加者の自己紹介
加悦鉄道(SL保存)に熱い思いを抱く方、福祉現場や福祉の人材不足について思い抱く方、教育現場、地域のこと、退職後のことを考えながら参加くださった方、地域で何かできることないかと学ぶ意欲をお持ちの方がご参加くださいました。
また、移住支援に関わったり、参加者との交流の繋がりを大切にしたい思いをもった役場の職員の方の参加もあり、様々な職種の官民を交えた交流の場となりました。
【2】濱田講師の沿革紹介
濱田講師は、「「住んでよかった」と思ってほしい」、「自分たちがチャレンジしながら、応援したい。」という思いから、地域の旗振り役となる『株式会社ローカルフラッグ』を立ち上げられました。
<<旗振り役を目指すわけ>>
濱田講師が、地域のことに対して強い思い入れを持つのは高校時代からの体験が発端となっているようです。
高校時代の濱田青年は、飛び抜けて勉強やスポーツができたわけでもなく、評価されない自分に自信がもてなかったと言います。
「こんな自分が居ていいのだろうか。」と考えることもあったそうです。
そんな中、地域のイベントで、友達と発表する機会を迎えた濱田青年は、地域の方に褒めてもらえたり、応援してもらうという喜びを知ります。その嬉しい気持ちから「地域に貢献するようになりたい!」という思いが湧き上がってきました。
学生には、「いろんな大人の人に出会ってみると社会がもっと広く見える。」「自分の居場所、自分が活躍する場所があるよ。」ということを伝えたいと言います。
<<旗振り役へのあゆみ>>
地域に貢献できる仕事といえば、役場で働くか、政治家になるしかないんじゃないか、と考えた濱田青年は、大学時代に、政治家の事務所でインターンシップを経験したり、色々な町を視察したりしました。
その中で、住民組織、民間の人が主になっていく必要性を感じました。
20地域くらい視察に行き、まちづくりのKEYMANになる方と話をし、「行政がとがっている」「民間がいろいろチャレンジしている」このどちらかだけではなくて、どちらもが同じ方向を向いて取り組んでいる町が、うまくいっている町だと感じたそうです。
そして、地元に働きたい仕事がない、自分が働きたいところがないのなら、自分が働きたいところをつくろう!という思いに至りました。
全国的にみると、学生時代から起業する人が増えています。様々な応援してくれるプログラムもあり、ビジネスプランコンテストや、財団や企業が応援してくれるものがあります。
そういったプログラムに参加する中、同世代でいろんなことにチャレンジしている人たちに出会い、ますます濱田青年の気持ちを高めていきました。
自分が起業した姿を見て「あの人が起業したんだったら、自分もできるだろう」という思いの流れをつくっていきたいと思ったそうです。
資本金は、5万円からのスタートでした。
町の施設を運営する民間募集に手を挙げもしましたが、いきなりの進出で認めてもらえませんでした。しかし、地域で応援してくれる信用金庫や会社にも出会いました。
<<株式会社ローカルフラッグとしての活動>>
- 与謝野ホップレンジャー
300名にのぼるボランティアの参加者により、夏のシーズンの週末になると、誰かしらがホップの摘み取りなどの手伝いに来てくれる。 - 採用活動
インターンシップの制度づくり。学生の方にどうやったら、働きたいと思ってもらえるかを一緒に考える。 - 移住定住の支援
役場と一緒になって進める事業。週末の対応や町の案内などをする。 - 新入社員研修
地域ぐるみで合同で同期をつくって活動。会社や景色の魅力だけでなく、普段の暮らしのコミュニティづくりの場としても活用してもらう。婚活支援もかねている。 - ローカルベンチャースクール
舞鶴、福知山の会社と一緒に、地域で事業をスタート、起業、事業継承に特化したチャレンジを後押しするプログラムに取り組んでいる。 - 後継ベンチャー
セミナー企画などをしている。 - ビールづくり
若い人たちが地元に帰ってきて働ける場所をつくりたい。自分たちの土台もつくりたい。という思いから、与謝野ホップと阿蘇海のカキを掛け合わせたアイデアで、ビールづくりを始めた。
地道に声を出していくことが大事、とクラウドファンディングにも取り組む。
まずは、流通に乗せるための缶ビールで、大阪のグランフロントに特設ビール置き場をいただいたり、都会のスーパーでも買えるようイオン、伊勢丹などにも卸す。
最初700万円〜2700万円へ年々成長中。
様々な事業に取り組む中で、知り合いが増え、顔が見える関係づくりになっています。
毎年ひとりずつくらいから仲間(社員)も増えてきたり、出資し応援してくれる外部の人も出てきたりしています。
今は、補助金や銀行からの出資、クラウドファンディングなどの資金が集まり、与謝野駅前に、ビール醸造場をつくる計画を進めています。
濱田講師は、ビール醸造場を皮切りに、駅前に会社の軸をもっていき、エリア活性化につなぎたいと考えます。
濱田講師は、まちづくり活動とビールのこと、2つのことをやっていくことが大事だと思っており、ビールでの稼ぎをまちづくりに投資していくという還元をしていきたいと考えます。
究極は、ビールが売れて、行政の予算に頼らなくても移住支援などに動けるようになりたいと思っているそうです。
なぜビールだったのか。
丹後ちりめん、農業・・・主力産業を考えた中で、
始まったばかりのホップの取り組みが、キャッチーでわかりやすく、何かしら商品がつくりたい!というのがきっかけでした。
会社を起業し始めたのがコロナ禍だったので、これからもっとやりやすくなるかと思うとたのしみだと語る濱田講師。
潤沢にお金がある訳ではないが、社員の暮らしが成り立つまでにはなっている今日。
人を雇う重みも感じており、事業を伸ばし続ける大変さも感じてはいますが、「まだまだ若いので、頑張ろう」と思っているとのこと。
同世代や若い人にわかりやすい事例のマスコットキャラクターにならなきゃ、と思っているそうです。
【3】参加者みんなでディスカッション
「与謝野町でもったいないと思うところ」「もっと活用できるんではないかと思うもの」について、参加者みんなで意見を出し合いました。
<<出し合った意見>>
<<<町のもったいないこと>>>
- 山が7、8割を占めているが、木が茂り過ぎている。
- 空き家・・・手放さず、手続きを先延ばしにされている。
- SL広場、SL車両。できるだけ残したい。
- 与謝野町の魅力が、ぼやけている。
- 旧町のしがらみ(それぞれが、それなりにやっていけるので、力を合わせにくい)
<<<もっと活用できるところ>>>
- 薪ストーブを普及させ、薪づくりを盛んにする。
間伐により森も明るくなる。
チェーンソー講習会など、仕組みを支援し、山仕事ができる人をもっとたくさん増やす。 - 空き家活用。
- 京都府であるというネームバリューを活かして与謝野町を知ってもらう。
- 与謝野町の魅力の象徴するものにもっとフォーカスをあてる。
- 加悦谷学舎生ともっと地域づくりに共に取り組む。
- 前向きにやろうとしている、面白い大人(人財)をこどもたちにもっと知ってもらいたい。
- もっとよさのみらい大学を活かして、人どうしの交流や、魅力を発見する機会を拡げる。
次回は、出し合った意見をブラッシュアップして「この町でやってみたいことを話し合おう」という締めくくりで第1回目を終えました。
<第2回目講座>
第2回目は、一般参加者が2名と少なかったのですが、濱田講師、参加者、役場職員、よさのみらい大学運営者、と少人数ながら様々な立場からじっくりとディスカッションを深めるワークショップとなりました。
前回出た意見も含めて、再度「与謝野町のもったいない」について意見を細かく出し、大きく「施設関係」「情報発信」「人財」「連携」について、次回もっと具体的にできることを話し合おうとなりました。
<<出し合った意見>>
与謝野町のもったいない!
[施設関係に関すること]
- ハコモノ施設がもったいない
- 公共施設の管理の仕方
- 農村婦人の家の活用
- 染色センターの活用
- 一字観公園(WEB予約ができない)
- 阿蘇シーサイドパークの活用・展開
- 自転車道(観光資源にもなりうるが、看板や案内など乏しい)
[地域資源・観光資源に関すること]
- 駅まわり
- SL広場
- 文化財
- 祭り
- 織物技術
- 建築
[情報発信に関すること]
- (与謝野町の)ウリがぼやけている
- いろんなことがバラバラしている(フォーカスできていない)
- 情報共有機能が弱い(花火や文化祭の内容など各地域で完結している。催し物の情報が広く共有できていない。)
- よさのみらい大学(めちゃくちゃいい内容なのに、なかなか参加してもらえない)
- 田畑山林耕作放棄地
- 空き家
- 観光案内(看板、ナビゲートが手薄い。観光文脈で考えれてない)
- マップの充実(情報共有、頭の整理の軸になる)
- ケーブルテレビを活かした情報共有
- 外向け発信が弱い
- もっと町長のウリをメディア活用してもよいのでは?
[人財に関すること]
- こどもたちが地域の人と挨拶ができる、いろんな方が声を掛けてくれる関係
- 3町の分別意識
- 高校(連携感が薄い)
- 議員(投票システムのあり方に見直しが必要?員数本当に必要?)
- 町の中にいるやる気のある人がもっと知れたらいいのに。(人を知る機会。活躍の場をひらく。)
[連携関係]
- 空き家について積極的にテコ入れする。(地域と行政の連携)
(少しずつ重点的に声掛けや持ち主との話を進めていく) - 庁舎ごとに機能を別にするのではなく、庁舎間の連携をとって、どこの庁舎からでも手続きができるようにする。
- 地域企業の連携
- 予算の使い方についてのアイデア出しをもっと町民みんなで考えられる体制にする。
(どこを軽減し、どこに充てるか、みんなで考える)
…等の意見があがりました。
<第3回目講座>
第3回目は、運営側を除く新たな参加者も含め、11名の参加があり、前回までの内容共有と、そこからできることをグループに分かれて話し合い、意見を発表。そして、最後に参加者それぞれが、自分自身がこれからのアクションとして何ができるか、したいかを考え、発表する場となりました。
<<前回までの内容共有>>
前回までのディスカッションから出た意見から主なお題目として
空き家問題/駅前の活性化/旧3町の地域連携/文化財がもったいない/観光の盛り上げ(魅力の明示)等があげられました。
(前回からあがったお題を受けて)第3回目参加者が思う気になる事
- 空き家問題
- 近隣市町との連携(e-Bikeのレンタル展開)
- 観光
- 宣伝下手(派手にするということでもなく、熱量をもってやってることを伝える)
- 取り組みがバラバラで、全部が繋がっていない。
- 町長の施策にみんなが乗っかれていない。ついていけていない感じを受ける。
- 発掘(空き家や人についてもっと知りたい)
<<課題をクリアにするためにできることは?>>
具体的に促進するためには、何をやっていったらいいのかを、今回は、主に「文化財」「観光」「空き家」の3つに焦点を当て、グループに分かれて議論し、話し合った意見が発表されました。
<<<文化財がもったいない!について議論したグループより>>>
- 古墳〜近世近代のちりめん街道〜千年ツバキ、資料館〜祭りなどがある。
- 魅力や重要さは町民、町外の方が知らないのでは?
- 若者に知ってほしい。
- まちの人が行きたくなる場所にするためには、どういうふうにすればよいかを考えよう。
- e-Bikeを使った周遊ツアーなどやってはどうか?
- 観光協会にもあるけれど、伊根や天橋立には集客があるようなところとの連携。乗り捨てできる仕組み。
- 休憩場所として町内の店舗への寄与もできたらと思う。
- 宿泊面として、井筒屋旅館もあるけれど、もっと古い家の一棟貸し展開や古墳公園の一棟貸し、など古民家を活かしていく。
- 町の人が格安で泊まれるようにしたり、知ってもらう機会をつくる。
- 住んでいる人が魅力を感じられる場所にまずしていこう。
<<<観光を盛り上げないともったいない!について議論したグループより>>>
- 外貨の獲得をもっとできるようになろう。
- 体験やお土産などの充実をはかる。
- ちりめん以外にもあることを知ってもらう。他のものにフォーカスをあてることも大切。
- 自然を活かして田園風景、海など+景色・宿泊・体験・お土産掛け合わせで価値をつくる。
- 畑で飲食体験、農業体験などパッケージの商品化。
- 担う人材育成にも力をいれる。
- 町外のファンづくりを広げる。
- 300人にいるホップレンジャーに、お金も落としてもらえる仕組みをつくる。
- 町民がどう楽しんでいけるか。住民をおいてけぼりにしない。
- 住む人がハッピーにならないと、観光にもつながらない。(外面だけでなく、暮らしの体制も充実させる。)
<<<空き家がもったいない!について議論したグループより>>>
- 理想状態は、空き家を0にする。
- 空き家バンクへの登録・移住の相談を増やす。
- 課題としては、空き家はたくさんあるけど、使いたい人に届いていない。
- 空き家バンクに登録されていない。貸せる状態になっていない。
- 空き家を貸すリアリティがない。具体的な進め方を周知していく。
- 情報は流されていても、次のアクションにつながりにくい。
- 地域から信頼を得ている方からの調査協力を得たり、地域の内々で広めていくことが大切ではないか。
- 全く知らない人とのやりとりはハードルがある。
- 大きい家になると単身者には使いにくいので、シェアハウスの仕組みなどをつくる。
- 手放したいけど、手放したくはないけど・・という思いの人に、どういう落とし所で動けるか売り方、貸し方について知ってもらう。
- 説明会とかのほうがいいんじゃないか。
- 空き家バンクに登録するメリットがわかりにくいのではないか。
- 仕組みをもっとはっきり明示し、目安を出していく。
- 地区でチームを組んで、取り組んでは?受け入れる体制の状況をつくる。
- 人の本気度(アクション)は、2万人という単位より、地区単位で取り組むほうが動きやすい。
- 地区ならではの利便性や魅力のコピーをつくって、選びやすくなる、動きやすくなるようにする。
- 受け入れる体制が大事
- 目前の自分の生活がおびやかされる不安で、受け入れにくい?(心的印象、不安要素に向き合う)
- チームと地域の人との交流が大事
<<自分なら、何でまちづくりに参画できるか>>
今度は、参加者ひとりひとりが、個人として、どんなアクションができるか、したいかを書き出し、発表しました。
(発表された参加者の思い)
- 移住・定住アンバサダーさんともっと交流し、協力して空き家バンクの制度を構築していきたい!
月一のミーティング。アンバサダー間での移住希望者情報の共有。不動産屋、司法書士さんを集めての説明会(段取りをわかりやすくする。) - ビールツーリズム!
ビールをとおして観光体験をしてもらう。ホップ関係の方と関係づくりを育みつつホップツーリズムの展開も。 - 移住・定住アンバサダーのつながりをしっかりつくる!
空き家調査を進めていきたい。重点地域を定めて動いていきたい。 - 住みたい村づくり!自然の中で遊びたい人が来てくれる場所にしていきたい。
自然好きな人が楽しめるキャンプ施設を今つくっている。観光ついでに泊まるのではなく、そこでキャンプするために来て、地域をみてもらいたい。移住支援にもつなげていきたい。 - 自分自身が地元を知る勉強をしながら、空き家バンクへのお手伝いができるようにする。
- 「ここなら、こんなことができる。」等のリストづくりをしてnote等WEB上にあげて、共有できるようにする。
学校でもリスト化しておき、自分がいなくても進めていきやすいようにする。 - 駅前にコーヒースタンドをつくる。
今まで旅をする時、訪れた町のオシャレなお店に行くのが楽しみだった。そのお店の人やそこに集う人に会うためにお店に行っていたので、そういった中の(地域の)人と旅人がつながる場所がつくりたい。 - e-Bikeを利用した文化財ツアーを実行する。
文化財だけでなくこの町の魅力をいろいろなチャンネル発信していきたい。
ビールに、ちりめん街道ラベル、ちりめん街道ボックスなどのコラボできないだろうか。 - 鉄道遺産が風化しないよう保存活動に携わっていく。
車両を置く場所などがあれば、ご協力よろしくお願いします。 - 移住者を増やしたい。
雪下ろしや草刈りの苦労も踏まえて、たのしい体験ができる観光ツールをつくる。
パラグライダー、カヤック、サップの体験などの楽しみを知ってもらう。
「駄菓子屋 順乃風」さんのようなキーマンを見つけ、移住支援につなげる。
最後に、濱田講師が
「みんなの想いを共有できる場が大事であり、まちづくりの計画につなげていきたい。」
「誇れるまちをつくっていきたい」という思いを話され、連続講座のゼミは締めくくられました。